私は普通の女子校生
だけど、わけわかんないやつに閉じ込められている
世界の危機って言われてもわかんない
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私は困っていた。わけわかんないやつに閉じ込められて、よくわかんないことをずっと言われ続けている。目の前に立っている銀色に光るやつと、ドアも窓もない部屋に二人っきり。帰りたいと言ってるのに、全然取り合ってくれない。昨日の夜に着替えたパジャマを着てるのに、ベッドもないし、枕元に置いていたスマホもない。そもそもココはどこなの。誘拐?拉致?わかんない。目の前の銀色に光るやつは、人の輪郭をしているのはなんとなく分かるけど、顔はぼんやりと光っていて男なのか女のかさえわかんない。声もおじいちゃんのようでおばさんのようでよくわかんない。意味わかんなくて、早く家に帰りたくて、なんだか怖さより怒りの方が強くなってきた。
「だから早く家に帰してって言ってるでしょ」
「やつらと戦う必要がある、この世界を守れるのはお主だけだ」
「いいから帰してって言ってるの」
「この世界を守れるのはお主だけなのだ」
「それ、何回も聞いたんだけど、とにかく家に帰して」
何回このやりとりを続けるの。もううんざり。気付いた時にはこの部屋にいて、目の前の変なやつが世界とか戦うとか言ってくる。よくわかんないし、興味もない。
「その話やめて、世界がどうとか戦いとか、興味ない」
「しかし、やつらはすでに近くまで来ているのだ。戦いに備えねば」
「分かったってば、家に帰してくれたら話聞くから」
せっかく提案してやったのに、あっさり断られた。
「この空間はお主と会話できる唯一の空間なのだ、ここでしか会話できない」
「そんなのってある?連絡先教えるから、とにかく家に帰して」
「この空間以上に伝達できる方法などない」
もううんざり。あー言えばこー言うってこの事だわ。私は諦めて座り込んだ。
「話聞けば帰れるの?」
「無論だ、これはお主の世界を救う事なのだ」
「とりあえずそのよくわかんない言い方、やめて」
「事はお主の世界とは違う世界で起こった。ある時力に目覚めた者が」
「わかりやすく言って」
「ある時力に目覚めたものが」
「わかりやすく」
「お主の世界に危機が迫っている」
なるほど、ゲームでよくあるやつね。だけど残念。私、ゲームやんないんだよね。
「世界の危機と私の何が関係あるの?」
「世界を救うのはお主しかいないのだ」
「残念、私はゲームやんないの」
「ゲームなどではない、危機は刻一刻と迫っているのだ」
帰れるかと思って話を聞き始めたけど、無駄だったみたい。よく分かんなかったわ。
「やっぱりすぐに家に帰して」
「なぜだ、お主の世界の危機なのだぞ」
「よくわかんない危機より、明日の学校の方がだいじなの、早く家に帰して」
「その学校とやらもなくなるぞ」
それは困る。せっかくクラスのみんなと打ち解けてきたし、何より先輩の彼女になるまでは学校に行かなくちゃ。
「学校がなくなるのは困る」
「そうであろう、ならばわれの話を聞いてくれ」
「そもそもあなた誰?」
銀色に光るわけわかんないやつは、よその世界からきたらしい。住んでた元の世界が強くて悪いやつに攻められて必死に戦ったけど、肉体を失い私の世界に逃げてきた。それでこの世界でも戦えるように気の合いそうな私に話しかけてきたと。今はテレパシーみたいなものだから直感的に話が通じるんだって。ついでにこの部屋は夢の中らしく、目が覚めるまで出られないらしい。
「他の人に頼んでよ、悪いやつと戦うなんていや」
悪いやつと戦うより、先輩を狙ってる他の子達との戦いの方がよっぽど大変なのだ。
「お主が一番適合率が高いのだ、先ほども伝えたであろう」
「そんなこと勝手に決めないで、とにかく私は嫌だから」
「お主の世界の危機なのだぞ?」
「それよりも学校の方がだいじなの」
「なんということだ、このままではまたしてもやつらに世界を滅ぼされてしまう」
「大丈夫大丈夫、他に助けてくれる人がいるから、じゃぁ私は起きるから」
なんとなくだけど、あとどれくらいで目が覚めるか分かってきた。さすが私の夢の中。悲しげに鈍く銀色に光っているやつを残して私は目覚めた。つまんない夢だったな。クマできてないかな?早く先輩に会いたいな。
銀色に光るやつは大きくため息をついてつぶやいていた。
「あと300年でやつらが攻めてきてしまう、一刻もはやく適合者を見つけねば」
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