ショートショート 生き返りの薬

ショートショート 生き返りの薬
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死んでも生き返らせることができる薬が開発された
開発した博士は宣伝のため、大きなお披露目会をすることにした
生き返りの薬の効果は……
3分で読めるショートショート

ショートショート 生き返りの薬

科学の発展は世の中をどんどん便利にしていった。ついには死んでも生き返らせる薬を作りだした。最初にその薬が発表された時の反響はすさまじく、科学の発展を喜ぶ者、神への冒涜だと嘆く者、利権を得ようと画策する者、大混乱になった。作りだしたのは98歳の博士。生き返りの薬など馬鹿馬鹿しいと周りからさげすまれ研究所から追い出されても、こつこつと研究を積み重ねてとうとう1人で薬を作りあげた天才であった。今までさげすまれていた博士は、ここぞとばかりに薬を作りだした事を触れ回った。研究所で作っていたら、薬が出来ても自分の手柄にはならなかったかもしれない。長年の研究で莫大な借金を負った博士からしてみれば、名誉もお金も手に入れるためには宣伝が欠かせなかった。

「お集まりの皆さんこんにちは、私が生き返りの薬を作りました」

今日は生き返りの薬のお披露目会である。博士は気合の入った面持ちで、マイクの前に立っていた。今日のお披露目会が成功すれば借金などあっという間になくなるであろう。かける思いもひとしおだ。

「今日は皆さんに、薬の効果をお見せしたいと思います」

博士は1人だったゆえに、人間での実験はまだ行っていなかった。動物実験での問題はなかったが、人間に効果があるのかは試していない。しかし理論は完璧であり、自信もあった。パフォーマンスのため今日は自分が実験の対象になるつもりであった。

「まずは毒薬を飲みます。私が死んでから、生き返りの薬を飲ませてもらいます。すぐに私は立ち上がるでしょう」

毒薬は自分で飲めるが、生き返りの薬は死んでから飲まねばならない。今日のために助手を一人雇った。生き返りの薬さえあれば大金持ちだ、助手代などたいしたことはない。

「人は死んでからしばらくすると、魂が離れます。天国へ向かうのです。実はここが重要でした。実際に私たちの魂は体から離れ、生きているうちにはわからない場所へ行きます。これが三途の川ですね。この薬は三途の川を渡った後に強制的に魂を振り返らせます。振り返った時に帰り道が分かる仕組みになっており、振り返って三途の川を戻ってきた者が生き返るのです」

お披露目会に集まった者たちは驚いた。まさかそんな仕組みだったなんて。いや待て、まずは成功せねば答えは分からない。会場は固唾を飲んで博士を見守っている。

「実際に死んだかどうか、三途の川を渡ったかどうかを判定する機械もつくりました。機械は助手が監視しています。私が三途の川を渡ったのを見届けたら、薬を飲ますよう助手に伝えてあります。私が三途の川を戻ってくるのを機械ごしに見守ってくれるでしょう。それでは早速」

言うが早いか、博士は手に持っていた毒薬をみんなの前で飲み込んだ。すぐに顔が真っ赤になり、見る見る真っ青になりその場に倒れる。助手が駆け寄って脈をはかり、死んだのをみんなに伝えた。少し待ってから助手は生き返りの薬を飲ませた。効果があるかどうか機械を監視しながら見守る。どうやら効果があったらしい、三途の川を渡った博士が振り返った様子を機械ごしに見る。ざわめいている者たちもやっと安心した。どうやら生き返りの薬は成功したようだ。

しかし、しばらく待っても博士は生き返らなかった。機械を調べ直す助手。集まった者たちはめいめい自分の意見を述べ出した。ざわめきが止まらない中、助手が分かったと大声を出す。集まった者たちは静まりかえり、助手に説明を求めた。助手は集まった者たちを見渡しながらこう言った。

「博士を振り返らすのには成功しました。しかし博士は三途の川を泳いで渡ろうとして、溺れて流されました」

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